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・季刊セクシュアリティにエッセイを書きました
・Synodosに記事を書きました
・9月27日、大阪市淀川区で講演します。
・10月に大阪で開かれるセクマイ支援全国大会で分科会やります。
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記憶と情熱の新鮮なうちに記録をばシリーズ。
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記憶と情熱の新鮮なうちに記録をばシリーズ。
スタディーツアーの2日目は、NYにあるLGBTコミュニティセンターにいってきました。
その名も The Center
街を歩いていると唐突にあらわれる大きなレインボーフラッグのここです。

かっこいい。
お話をしてくれたのはロバート氏。
このセンターは、もともと私立学校として建設され、1975年まで使用されていた施設。
学校が撤退し、売却が決まったものの、あまりにもボロくて天井の雨漏りもひどかったところを、LGBTコミュニティが1984年に買い取って現在に至る施設です。
1969年くらいからずっと「コミュニティセンター、ほしいね!」というアイデアはあったものの、当時のみんなは組織とかルールとかが大っきらいで(笑)全然まとまらなかったそう。
それが80年代初頭のエイズクライシスによって(おそらく本当にどうしようもなくなって)、センターが成立。
レズビアンとゲイは仲が悪いし、「センター?はぁ?」みたいな人たちもいたので、これはみんなにサービスするセンターなんだよ(支配的じゃないんだよ)というメッセージを発したり、いろいろと配慮したそうです。
いまの日本とあんまり変わらないべ。
現在ではセンターは
・いろいろなLGBT団体(アルコール依存症の自助ミーティングや読書会から、カラオケ同好会まで実に多様)への会議室の貸し出し:それらの団体の力になったり、各団体のつながりを作るハブ的機能。
15部屋を毎日貸し出しており、年間15000プログラムもやっているそうです。
・独自のプログラムの実施
性自認に関するプログラム、若者のプログラムなど
・図書館を設けてアーカイブ機能を持つこと
LGBTに関する書籍やビデオ、個人の日記や団体の発行物などを集めている)
・一般社会への啓発
などの役目を担っています。
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さて。ロバート氏の話を聞きながらいちばん思ったのは、あぁどこも同じやねんな、ということでした。
たしかに予算規模や建物があること、団体の数やプログラムの豊富さは日本とは桁違いだけれど、
センターやコミュニティ内部の多様性をめぐる闘いは、ここでも現在進行中のテーマなのです。
ゲイはレズビアンのことがわからないし、トランスといっても「何それ?」って人は多いし、
人種や経済格差をめぐる問題も、いまだに取り組み中だそう。
おそらく、このセンターって、いろいろ当事者内から批判くらい続けてきたんやろな、と思いました。
(それは期待の裏返しでもあり、成熟に必要な過程でもあります)。
ロバート氏いわく
「スタッフが40人いて、見合った給料も払っている。でも仕事ができる人を即採用したいときは、どうしても白人男性のゲイで高学歴、健常者ばっかりに偏ってしまう。特定の人たちばかりリーダーになるのは多様性の観点からは良くないことだから、採用はきちんと計画性と余裕を持って考えなくちゃいけないんだよね」
もう少し突っ込んで訊いてみました。
「日本ではコミュニティセンターの財源はほぼMSM(men who has sex with men)のHIV対策から来ている。いろいろな活動の場面でお金をとってくるのも、ゲイが圧倒的に多くて、レズビアンやトランスは本当に貧乏。これは社会構造的な理由もあって、本来は公平なことではないと思う。
運営側がLGBT全体の問題について自覚的でなく、もしも”おれたちがお金をとってきているんだし”とか思っている限りはそういうセンターやコミュニティ全体ではMSM以外の人達は周縁化させられてしまうと思う。どう思いますか?」
運営側がLGBT全体の問題について自覚的でなく、もしも”おれたちがお金をとってきているんだし”とか思っている限りはそういうセンターやコミュニティ全体ではMSM以外の人達は周縁化させられてしまうと思う。どう思いますか?」
「複雑なのは、もうそれはそれでOKだし、このセンターで起きる全ての議論が大切なんだよ。
ゲイとレズビアンの対立はここでも起きてきた。でも、女性差別の問題の解決なくして、ホモフォビア(同性愛嫌悪)の解消なんてないよね。だってホモフォビアの根っこには、男が女みたいに振る舞うことへのネガティブな価値観があるんだから。多様性の問題は、結局はお互い話さないと、いつも本当にはわからない(put it on the table!)。対立が起きることは前提だと思っている。アイメッセージ(私はこう思うんだ)という風に話して、お互いの話を尊重して、なるべく安全な対話の場を作るしかないよ。」
「昨今では、なにが計画的でどれがエビデンスで、みたいなことが言われる。
HIV対策でも、これとこれに限定してやりなさい、みたいな話になる。自由にできなくなった。
でも、ビッグデータには興味ないんだよね。みんながつながっていくのが大事なんだよ」
…王道なんかないねんな。
本当に長年活動をしてきたアクティビストだからこその直観だし、本質なんやろなと思いました。
なにが本当に効果があり、意味があるのかみたいな(昨今のトレンドだよね)ことを突き詰めることは、多様な活動の芽を摘むことにもなりかねないもんね。
日本でも多様性をめぐる問題や対立はあるけど、ここもまた完成形ではないし、
日本でやっていること(批判し合いつつケンカもしつつも、対話し続けていくこと)をこのまま続けたらいいんじゃないかと思いました。
続く。